いなご豆

 当店では、ジェラートの滑らかさを保つための安定剤に、“いなご豆の種粉”だけを使用しています。

いなご豆(イタリア名 carruba:カルーバ)はカロブ豆とも呼ばれ、地中海沿岸で育つマメ科の植物です。
主な生育地であるシチリア島では、馬の好物なのでよく飼料として与えられるため、
さやごと籠に摘んでいくおじさんたちをよく見かけます。

その“いなご豆の種粉”は、昔からシチリアのジェラート職人がジェラートの安定剤として使っています。
今ではイタリアでもいなご豆だけを使ってジェラートを作る店は数少なくなってしまいましたが
シチリアにはまだ、伝統的な製法を守っているジェラテリアがイタリア本土より多く残っているようです。

いなご豆だけを使用したジェラートは 一般のジェラートに比べて、短い時間しか保存できません。
また、それぞれのフレーバーの硬さや食感が均一にならないので、 扱いも難しくなります。
しかし、素材そのものの本来の風味や食感が損なわれることなくストレートに伝わり、
後味もすっきりとしています。
当店では 試行錯誤の末、あえていなご豆だけを使ってシンプルに作ることで、
素材の味を最大限に引き出すことにこだわりました。


ところで、いなご豆の果肉部分(さや)はチョコレートに似た風味があり、
乾燥させたものをココアの代用品として使ったりします。

シチリアでは、この果肉を使ってキャンディを作ったりします。果肉を乾燥させてチップ状にしたものや、
粉末にしたものは、最近日本の自然食品の店などでも扱っているようです。
当店でもシチリアの古いレシピを紐解き、いなご豆の果肉を使ったジェラートも作っています。

ちなみに、宝石の単位「カラット」は、その昔いなご豆の種を分銅として使っていたことから
「カロブ豆」が語源になっているそうです。